楽器を演奏する人には、弦楽器派と打楽器派、それに管楽器派がいるようだ。他の楽器には興味がない。
私は弦楽器派だが、タブラだけは大変興味をもち、シタール修行のかたわらタブラも習うことになった。
インド古典音楽は、ブラーマン階級の人たちの素養とされる。
相棒のK君が入門したのは、Gangadhar Rao Kevhar というブラーマンであった。
彼の練習に付いていって、ガンガダのタブラ演奏を生で聴き、太鼓が音階を出すという妙技に唖然とした。
太鼓にもチューニングというのはあるが、音階という概念はない。あるのは、リズムだけ。
しかし、タブラは打撃面の皮を手の平付け根に近い部分に押し当てて、皮の張り加減を変えて音階を変える、という奏法がある。
太鼓はドンという一定の音しか出さないと思っている人は、協奏者のシタールあるいはサロードの奏でるフレーズを、そっくりタブラでコピーして返す離れ業に、おお!という驚嘆の声を上げてしまう。タブラの基本的な奏法を次に紹介したい。
Alla Rakha - Tabla Solo
インド音楽の特徴に、即興で相手とやりとりするパート(ジュガルバンディー)があり、最も楽しい、スリリングな見せ場となっている。これは、ボーカルVSサロードとか、シタールVSサランギという楽器とか、タブラVSシタールとか、組み合わせはいろいろある。
私が最も面白く楽しんだのは、タブラを伴奏にして踊るカタックダンスだった。
このダンスは、我が国でよく知られているインド美女が首を左右に振るカタカリダンスなどとは全く違い、足首に多数の鈴を付けたダンサーが、ステップダンスのように激しく踊るのである。
ステップダンスと違うのは、素早い回転が入ること。
タブラが、タタタ、タタタ、タタタ、タン!と打つと、
ダンサーが、鈴をシャシャシャ、シャシャシャ、シャシャシャ、シャン!と回転しながら、最後にピタッと決めポーズをとる。
これが決まると、観客が大喝采する。
男のダンサーが化粧して踊る場合、女性ダンサーよりも動きが鋭く速く、ものすごくかっこいいのであった。化粧した男のダンサーが女性的な手の動きを見せて、不思議な雰囲気をかもし出す。
kathak duet by Anuj and smriti mishra
さて、話を戻そう。
ガンガダのタブラを見聞きして、チャイをごちそうになる。
その席で、彼は「あなたもタブラを習うか?」と尋ねてきた。
インド人特有のニコリともせずに鋭い眼光で、じっと瞬きもしないで射るような視線を向けてくる。
私は、「いや、私はシタールならやっても良いが…」と逃げ出しそうに答えると、
「アッチャー!、と言って、彼は回廊の中空に向かって誰かを呼ぶように声を上げた。
上の階から、誰かの返事が聞こえ、やってきたのはガンガダの兄という老人だった。
このやせこけた老人が私の最初のグル(導師)となったLaxman 爺である。
こうして、翌日から私はグルの元に、シタールを習いに通うことになった。
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