はじめに
( この「精神世界の旅」は現在進行形の話ではなく、
過去の体験を思い出すままに書いているものです )
ネパールの聖峰アンナプルナ(豊穣の女神)トレッキングを終えて、Pokhara から次の目的地、ヒンドゥーの聖地ベナレス(バラナシ)に移動するバスで、私は旅行ザックを盗まれてしまった。
その経緯は別な機会に書きたい。
バラナシのコダイキチョウキという地区の宿に落ち着いた私は、翌日地元の警察に被害届を出しに行った。AIUの旅行保険に入っていたので、調書を作成してもらうためであった。
署長はがさつだが(現地では普通なのだろう)、意外に親切だった。
私は事の顛末を述べ、彼が盗難証明書を書いた。
時々、私がスペルのミスを指摘したために、部下の手前もあってか…
「お前が、自分で書け!」と、
書きかけの書類を私に突きだした。
それをいいことに、私は盗難品のカメラを
スナップカメラではなく、ニコンの最高級品として書き込んだ。
保険の規定で、1万円以下のものは保証外という足きりがあったので、
損失の半分も戻ってこない事を知っていたために、
旅費不足を来さないように偽装したのであった。
書類を書き終えると、署長はイモ判のように字がつぶれて読めない検印を押してくれた。
そして、私にヒンドゥー的訓辞をたれた…
「ジャパニ、お前はインドを旅行するだけの余裕がある。
日本人は我々と比べて、金持ちだ。
旅行バッグを盗まれたのは気の毒だが…
もう、戻っては来ない。しかし、
それで、泥棒たちの家族が養えることになる。
彼らは、みんな喜んでいるだろう。
神も喜ぶ。
だから、
お前も喜べ!
ここはインドなんだ…」
バッグには、カメラや電気カミソリなどの文明の利器が入っていた。
ヒンドゥー教徒の終焉の聖地とされるベナレスに入るに際して、
私は裸一貫状態でたどり着いた。
あたかも、大多数のヒンドゥーたちが裸一貫、ショールと水瓶だけで
この地を目指すように。
その後、ベナレスでずるずると1年以上生活していく中で、
彼の言葉が受け入れられるようになっていった。
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